すべての生き物は死んだら生まれ変わる
「Saṃsāra(サムサーラ)輪廻転生」とは、生命あるものが生と死を何度も繰り返し、人だけでなく動物や昆虫、霊体なども含めた、あらゆる存在として生まれ変わることです。
ほとんどのインドの宗教における基本的な死生観であり、ブッダ もこの輪廻転生を前提に、その輪廻のサイクルから抜ける「涅槃」を実現しました。
ブッダ の見解では、肉体は死んで滅び朽ち果てますが、心の中の意識・認識作用(魂ではない)は、死んだと同時に次の生命に移転します。人だけでなく動物や昆虫など、すべての生き物が同様に、死んだら生まれ変わります。
死の瞬間に何が起きるのか
S.N.ゴエンカ氏の著書『The Art of Dying』によると、「人が死ぬ瞬間には、心に非常に強い特定の感情が浮かびます。その感情がネガティブでもポジティブでも関係なく、その非常に強いエネルギーが次の生命を生み出す推進力となり、次の存在界へと押し出されます。
そして時間や空間という概念を超えた「次の世界(存在界)」の新たな存在体(身体・霊体など)に意識が移転します。まるで列車の線路が切り替わるように、次の生命の流れがそのまま続いてはじまります。人間や動物に生まれ変わるのであれば、死の瞬間が受胎の瞬間になります」。これが輪廻転生のメカニズムです。
次の存在界はどのように決まるのか
死の瞬間に心に生じたその強い感情のエネルギーは、生成のエネルギー源となると同時に、同じような波動のエネルギーが強い存在界と、互いに引きつけ合ってつながり、その存在界へと流れていきます。次の生まれ変わり先の存在界です。
もし、その強い感情が不幸や否定的な波動のエネルギーであれば、新しい意識は同じように否定的で不幸な存在界に生まれ出ます。逆に、徳や満足に満ちた波動のエネルギーであれば、新たな生命は幸福な存在界に生まれ変わることになります。
例えば「怒りや敵意」は、「熱や興奮」の波動を持ち、低い存在界と結びつきます。
同様に「mettā(愛と慈しみ)」は「穏やかで冷静」な波動を持つので、ブラフマー界としか結びつきません。
これは自然の法則であり、これらの法則は非常に完璧に秩序化されているため、その動作に欠陥はない」そうです。これが輪廻転生のシステムです。
アラハンは輪廻転生しない
ただし、悟りの最終段階に至った人、涅槃に到達した人であるアラハンは、生まれ変わりません。輪廻転生のサイクルから解放されます。
なぜ生まれ変わらないのか?
アラハンは、次の生命を生み出せるような非常に強いエネルギーの源になる「渇望」を全て滅尽させた人だからです。強力なエネルギーが発生しないので、次の生命に生まれ出る推進力を得ることができないのです。
したがって現世が最後の1回、ラストワールドです。肉体が死んだ瞬間に意識が消滅します。これを「涅槃を実現する」といいます。
生まれ変わり先
死とともに意識が消滅するアラハン以外は「次の存在界」に行くことになります。
存在界とは「全宇宙にある意識が存在するさまざまな世界」のことです。私たちが今、存在している(と認識している)人間界を含めて31存在界あるそうです。
以上です。