八正道 8つの正しい道

8つの正しい道」とは、正しい見方、正しい考え方、正しい言葉、正しい行為、正しい生き方、正しい努力・精進、正しい気づき、正しい集中・精神統一のことです。仏教用語では、八正道と呼びます。

8つの正しい道

1. 正しい見方 sammā‑diṭṭhi

何が現実で何が現実ではないか、何が正しくて何が正しくないのかを、あるいは何が役立つことで何が有害かを、色眼鏡をかけずに客観的に見ることです。正しく判別するためには、正しい気づき正しい集中が必要です。

2. 正しい考え方 sammā-saṅkappo

正しい見方で物事を捉えて判別した後は、意図あるいは動機の思考が、物事に対して自分がどのような態度をとるかについて考えます。これが行為の意図となり動機となります。

この時に正しい考え方は、欲のない考え、怒りや憎しみなど悪意のない考え、害のない考えを導きます。

正しい見方を基にした正しい考え方は、非暴力的であることが特徴です。

苦しんでいる他者に害を生じさせたり、イライラさせたり、困らせたりしないことを望み、他者がうまくいかないことを喜んだりはしない。他者が間違いを犯した時に、それはその人が本来悪い人間であるということではなく、心の混乱から生じたのだと見分けることができる考え方です。

正しい見方から正しい考え方に至ることができると、自然に正しい言葉正しい行為、正しい生計に導かれます。

3. 正しい言葉 sammā-vācā

嘘をつかない。真実を誇張したり、歪曲しない。

陰口・悪口を言わない。反感から他者を批判することがあってはいけません。 特定の人との間に問題があるときには、本人に直接話すことです。

きつい言葉や失礼な言い方はしない。他を害する言葉、傷つける言葉は慎まなくてはなりません。常に丁寧で穏やかな言い方を心掛けることです。

噂話やおしゃべりは慎む。他者の時間を奪うことになるからです。正しく話すことは、黙っているよりも難しいものです。

無視しない。言葉を意図的に発しない「無視」も悪意が基にあれば沈黙の暴力です。ただし、迷ったとき、わからないときには、余計なことは言わず、黙って微笑み、ダンマに任せておく方がいいのです。

4. 正しい行為 sammā-kammanto

生き物を殺さない盗みをしないみだらな性行為をしないことです。

5. 正しい生き方 sammā-ājīvo

間違った手段で生計を立てずに、正しい手段で生計を立てること。出家者でなければ、生活のためのお金が必要なので、何らかの方法で生計を立てなければなりません。それが他を傷つけるものであってはいけない、ということです。

例えば、自分が事務職であっても核兵器を作る会社に勤めるのは、殺人に加担することになります。他者から搾取したり、生き物やその肉を販売したり、酒類や麻薬を販売するのも、他を傷つけます。

自分のやりがいや、自分の評価のために仕事をするのではなく、社会・他者の役に立つために、自分の技能を提供するのが正しい生き方です。

6. 正しい努力・精進 sammā-vāyāmo

正しい努力とは、次の4つのことを努力し精進することです。

新たに悪いことをしない

現在行っている悪事をやめる

新たに良いことをする

現在行っている良いことを続ける

7. 正しい気づき sammā-sati

いまのこの瞬間に、身体の内側や外側で起きる出来事・現象に対して、ありのままの事実に気づいていることです。心に好きとか嫌いといった評価が生まれたら、その瞬間に気づくことです。これが正しい気づきです。

すべての行動とその感覚、心に浮かぶ思いを、常に意識して自覚し続けることです。つまり五感で得た感覚と心に浮かんだ思いに対して、常に意識して気づいていることです。

8. 正しい集中・精神統一 sammā-samādhi

sama(平静)+adhi(置く)サマーディ瞑想(サマタ瞑想)のこと。

何か1つの対象に心を集中し、心の動揺がない状態に精神統一する修行法。瞑想のことです。

徹底的に1つに集中し、他の情報を遮断できると、集中力自体が心に強烈な喜悦感を与えます。それによって欲の世界に対する執着が薄れ、一時的に欲の世界から離れられるようになります。瞑想と自分が一体化した状態が流れていくような経験が生まれますが、その心の状態が「ジャーナ」です。

3つのグループ

この8つの正しい道は、3つのグループに分けられます。

パンニャー(智慧)

1.正しい見方 2. 正しい考え方

智慧と洞察を培う道です。次にあげるシーラとサマーディだけでは、心の奥深くの汚れを取り除くことはできません。智慧と洞察によって心は完全に浄化されます。

シーラ(戒律)

3. 正しい言葉 4. 正しい行為 5. 正しい生き方 

言葉・身体・心において、不健全な悪いことはしない、という道徳の道です。

サマーディ(精神統一)

6. 正しい努力 7. 正しい気づき 8. 正しい集中・精神統一

心を統一することで制御する訓練の道です。

まとめ

1〜6つ目までの道は、「物事を客観的に見て、正しく考え、語り、行動しなさい。役に立つ仕事をして、前向きに励みなさい」ということです。

7と8の道は「せっかくだから瞑想して、悟りの修行にも挑戦しなさい」という道です。瞑想修行を伴うので、興味がない人には敷居が高いかもしれませんが、瞑想自体は誰でもできる極簡単なものです。ただ、それを真剣に真面目に根気よく、集中し、気づき続けることは、楽なことではなく、何よりも難しいことなのです。

この8つの道を繰り返し実践することで、渇望を捨てて、心が苦しみから解放される助けになります。これが苦しみをなくし、安らぎを得るための8つの正しい道です。

どれも人が生きていく上では当たり前のことで、これが「道徳」の基となりましたが、いつの間にか道徳は、他者に守らせるべき道徳教育になっています。道徳は本来、他者に強いることではなく、自分が守るべきことです。そして、たとえ他者が守っていなくても、気に留めない心が大事です。

以上です。