サティーパッターナ・スッタ・コース Day1

Day1 アーナーパーナ瞑想
呼吸に気づく

初日の朝。4時25分に瞑想ホールに行くと、既にほとんどの人が着席して瞑想を始めていました。さすが! みなさん、10日間コースを3回以上やってるだけあって、真剣度が違います。坐り姿勢もきれいだし、誰も途中退室しません。なので、瞑想ホールが怖いくらい静まり返って、まさに静謐。衣ずれの音がとても大きく聞こえてしまう。

5:00過ぎくらいからATが来て、早々にチャンティングが始まります。朝の詠唱がイマイチ好きではなかった私は、「朝早くから、長々とやだなー(すでに嫌悪)」と思っていましたが、このマハー・サティーパッターナ・スッタの詠唱は、めっちゃいい! まあ好みもあると思いますが、リズミカルで、とっても心地良くって、ずーっと聞いていたい(渇望)。なので、聞いていたいがために、4時半から6時半まで通しで坐ることができるようになりました。

6:30 朝食

ごはん、水菜ときのこの味噌汁、白菜の漬物、梅干 コーヒー、紅茶、ほうじ茶

少し休憩して、8時から1時間のグループ瞑想です。ホールに入る前にコースマネージャーによる検温がありました。毎朝、検温です。手首を出してピッと測ってくれます。37.5℃以上あったら帰宅だそうです。

瞑想はいつもと一緒で、アーナーパーナ瞑想から始まります。意識を、鼻孔の下から上唇の上の部分において、出たり入ったりする自然な呼吸に気づく瞑想です。

いつもと同じ瞑想ですが、今回の私はちょっと違うのです。
なぜなら「鬼滅の刃」を観たから。(って、なんだ、それ?)

「全集中の呼吸!」

アニメの中の合言葉「全集中の呼吸!」が、まさにアーナーパーナ瞑想と一緒なのです。
この言葉のおかげで、いつもよりもずっとスムーズに集中できました。炭次郎や、気絶した時のクールな善逸を思い起こして、「全集中の呼吸!」って鼻の下の呼吸に意識を持っていくと、まあ、いつもより簡単に集中できるじゃないですか〜。

「鬼滅の刃」が、なぜそんなに流行るのかが知りたくて、アマゾンプライムで観ただけだったのですが、意外にも役立ったわー。なんだかあのアニメの世界で繰り広げられていることは、私の心の中で繰り広げられていることと一緒なんだもん。
心の中の鬼たちに、全集中の呼吸で立ち向かう。嗅覚や聴覚が鋭くなり、全集中が整うと1本の糸がピンと張るのも一緒。
ただし鬼殺隊のように「一度に大量の酸素を血中に取り込んで、血管や筋肉を強化・熱化させて瞬間的に身体能力を大幅に上昇させる特殊な呼吸法」ではなくて、あくまで自然な呼吸で、むしろ止まっているくらいかすかな呼吸に全集中なのです。

「鬼滅の刃」では、最小限の動作で最大限の力を引き出すことで、頭の中も不要な思考が削がれ、だんだん透明になっていき、そうすると『透き通る世界』が見えるといいます。これってサンカーラ が剥がれ落ちて浄化されていくのと一緒では? 作者の吾峠氏は禅とか瞑想とかをベースにしてるのでしょうか?

11:00 昼食

厚揚げの野菜あんかけ、白菜の和物、ごはん、大根とネギの味噌汁、リンゴ

昼食後、シャワーを浴びて下着を洗濯。
今回は予備の下着を持参しなかったので、脱いだら洗うパターンにしてみました。が、やっぱり1着予備があった方が、洗濯がいつでもできてよかったです。3日間コースも含めれば6回目なのに、いまだに持ち物のコツが掴めきれていません。

12:50に鐘がなり、瞑想ホール前に全員集合。
毎日この時間に、コースマネージャーが非接触型体温計で参加者の検温をします。
そのままホールに入って瞑想を開始します。自室で瞑想してもOKですが、ほとんどの人がホールで坐っていました。いったん坐ると動かない人ばかりなので、とても静かです。

グループ瞑想:呼吸に1分間気づいていなさい

14:20に鐘がなり、トイレへ。14:30から1時間のグループ瞑想です。
ゴエンカ氏のテープによる指示は、「呼吸に気づいていなさい。まず1分間、気づいていなさい」と簡潔です。
15:30にグループ瞑想は終了しますが、立ち上がる人は少なく、そのまま瞑想続行しました。

17時 ティーブレイク

食堂には、コーヒー紅茶、レモン果汁、砂糖が用意されています。ガブガブ飲むとトイレに行きたくなるので、夜用のお湯と水を持参したポットにもらいにいくだけです。
私はこの時間に、湯たんぽに熱いお湯を入れて布団を暖めておきます。

17:50鐘がなり、瞑想ホールへ。18時から1時間のグループ瞑想です。
終了後、トイレ休憩をはさんで、夜の講話が始まります。

夜の講話 1日目

「マハーサティパッターナ・スッタ」を読む

19時過ぎ、瞑想ホールに戻ると、各自の座布団の前に教科書とA4のメモ用紙1枚、ボールペンが置かれていました。

サティパッターナ・スッタ教科書
サティパッターナ・スッタ教科書見開き

教科書を開くと、左側はパーリ語(ブッダの時代に使われていた話し言葉)で、右側には日本語訳が書かれています。

マハー・サティパッターナ・スッタ大経典の内容

序文
1.カーヤーヌパッサナー:身体の観察(自分に関する物質的組織)
 A. 呼吸の部
 B. 姿勢の部
 C. 無常の絶え間なく徹底的な理解の部サンパジャーナ
 D. 厭わしさについての熟考の部
 E. 物質的要素についての熟考の部
 F. 死体置き場における9つの観察の部
2.ヴェーダナーヌパッサナー:感覚の観察(快・不快・どちらでもない)
3.チッターヌパッサナー:心の観察(明るい心、怠け心、欲望など)
4.ダンマーヌパッサナー:心の中身の観察(苦、無常、因縁など自然の法則)
 A. 障害の部(道の妨げとなる5つの障害)
 B. 集合体の部(人間を成り立たせている5つの集合体)
 C. 感覚界の部(6つの感覚器官と6つ対象物)
 D. 悟りの要素の部(7つの悟りの要因)
 E. 聖なる真理の部(4つの聖なる真理)
   苦の真理についての解説
   苦の生起の真理についての解説
   苦の消滅の真理についての解説
   道の真理についての解説(八正道)
気づきの確立の成果

以上の構成となっています。

8日間の心得 全集中・常中!

初日の講話は経典の内容ではなく、8日間の心得のような説法でした。

一番気をつけるべきことは「修行の実践」が何より大切だということ。
夜の講話でブッダの言葉を学ぶのは、あくまで修行の実践を励ますためのパリアッティ(十分)、知的理解、正しい理解のために経典を読む。経典や講話を論じるのが目的になってはならない。そうでなければ瞑想センターでなくパリアッティセンターになってしまう。

アーナーパーナ瞑想では、呼吸に意識を向け続けるように。それが『サティ(気づき)』。
息が入ってくる、息が出ていく、それをあるがままに見る。息を整えずにただ観察する。観察を続けているうちに、心は息に集中していく。息はかすかになり、短くなっていく。やがて息は出ると同時に入るようになる。Uターンするかのように。そうなってもなにもせずに観察する。ただ気づいている。時には息が止まっているように思えることもある。すると酸素が欲しくなる。息が大きく入る。それをただ観察して気づいている。やがてまた息は短くなり、Uターンをし、止まったかのように感じる。そしてまた息が大きく深く入る。あるがままの現実に気づいていなさい。

休んでいる場合ではない。
休憩中も、座っている時も立っている時も歩いている時も、入浴中も洗濯中も、食事中も横になって眠りにつくまでの間も。深い眠りについている時以外は、昼も夜も、常に自然な呼吸に気づいているようにしなさい。ヴィパッサナーに入ってからは、昼も夜も常に、アニッチャ(無常)に気づいているようにしなさい。

おおー、これは「鬼滅の刃」でいうところの「全集中・常中!」じゃないですか。
鬼殺隊は24時間ずっとだし、そのためには巨大な瓢箪を破裂させるくらいの肺活力が必要という設定だけど、こちらは深い眠りについている時以外は集中を続けるだけでオッケーで、呼吸はあくまで自然にです。

Day2に続く