4つの聖なる真理とは?
ブッダは35歳の時に、菩提樹の下で瞑想をして最終段階の悟りに到達しましたが、その際に気づいた考えが「cattāri ariyasaccāni 4つの聖なる真理」です。
ブッダはまず「人間の苦しみの原因は、心の認識の問題」であると発見しました。そして輪廻転生を繰り返す原動力は、苦悩の原因である「渇望」であることを理解しました。この真理を4つに分類してまとめたものが「4つの聖なる真理」です。
苦の真実(dukkha sacca)、苦の原因の真実(samudaya sacca)、苦の停止の真実(nirodha sacca)、苦を停止に導く道の真実(magga sacca)の4つです。仏教用語では「四諦(したい)」と呼びます。
※ sacca=真実(本当のこと)、dhamma=真理(不変の法則)、と本サイトでは訳していますが、4つの聖なる真理に関しては、真理とするのが定説なので、それに準じています。内容的には、真実でも真理でもいいと思います。
1 苦の真実は「執着」
苦しみとは何か?
まず「生老病死」は苦しみです。誕生・老い・病い・死は、思い通りには決してならないので誰にとっても苦しみを伴います。
身体のどこかが痛いのは苦しみで、肉体的な苦痛です。心が痛むのも苦しみで、悲しみ・嘆き・憂い・悩みなどは精神的な苦痛です。
嫌なものと関わること、好むものから離れること、欲しいものが得られないことは苦しみです。
つまり「自分の肉体と心への執着」が苦しみの正体です。これが苦の真実です。
2 苦の原因の真実は「渇望」
人はなぜ苦しむのか?
苦しみが生まれる原因は「渇望(taṇhā)」です。
渇望とは、欲望や快楽と結びついて、もっともっととそれを求めてやまない衝動的感情のことです。つまり、肉体的な快楽を求める渇望、存在して欲しいと求める渇望、存在しないで欲しいと求める渇望のことです。
人間は6つの感覚器官(目・耳・鼻・口・身体・心)を通して感じた、「見える物体・聞こえる音・匂い・味・感触・思い」に対して、好きと嫌いで反応します。好きという反応は「渇望」に、嫌いという反応は「嫌悪」となります。嫌悪は渇望の裏返しです。この6種類の感覚を欲しがったり、嫌がったりするのが渇望です。
愛着を抱くもの、心地よいと思う感覚があれば、なくしたくない、ずっと持っていたい、もっと増やしたいと望みます。心地よくないと思う感覚があれば、それを嫌い排除しようとします。そこには渇望が生まれ、その渇望が満たされない時、苦しみが始まります。
心に渇望が生じる時、心の奥底には苛立ちの激しいエネルギーが起こります。これが生命の原動力になっています。心の反応の1つひとつが、意識の流れに勢いをつけるのです。渇望はその大きなエネルギー源なのです。
6つの感覚器官が働き続ける限り、この意識の流れを止めることはできませんが、その好き嫌いの反応に気づくことはできます。反応は無知ゆえに起こるからです。
3 苦の停止の真実は「渇望を捨てる」
苦しみを消すには、どうすればいいのでしょう?
苦の原因である「渇望」を捨てればいいのです。渇望を捨てれば、渇望は消滅します。
でも、どうやって渇望を捨てるのか?
渇望は、6つの感覚器官 (視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、心) で生まれるので、渇望が生まれた瞬間に気づいて渇望をやめるのです。つまり心が反応しないように気づくのです。すると渇望は停止します。
愛着や心地よさで、心が喜びいっぱいになっているものを手放すのはとても難しいことです。ドキドキ感や楽しいワクワク感を、なんで捨てなきゃいけないの、いつまでも感じていたい、もっと欲しい。これが渇望であり、決して満足することはないのです。
常日頃から心を冷静に観察するクセをつけて、何かに愛着を抱いた瞬間、何かを心地よいと思った瞬間、何かを心地よくないと嫌悪した瞬間に、気づくことができるように訓練するのです。
気づいたなら、その渇望の思いを捨てればいいだけです。捨てがたくても、それが苦しみの原因であることを理解して、捨てることができたなら、渇望は止まり消滅します。苦しみはなくなります。
4 苦を停止へと導く道の真実
苦しみを停止するのは至難の技です。ブッダはそれを助けるための道を8つ考えました。
正しい見方、正しい考え方、正しい言葉、正しい行為、正しい生き方、正しい努力、正しい気づき、正しい集中・精神統一。「8つの正しい道」、仏教用語では「八正道」と呼ばれるものです。この8つの道を実践することで、苦しみを停止できるとブッダは教えています。
8つの正しい道の詳細はこちら
まとめ
これがブッダが悟りを開いた際に、まとめた考え「4つの聖なる真理」です。ブッダはその後、はじめての説法で5人の弟子に、この4つの聖なる真理を説きました。
以上です。