はじめてのヴィパッサナー瞑想 京都

瞑想する人のイラスト

ヴィパッサナー瞑想10日間コース

初めて参加したヴィパッサナー瞑想10日間コースは、2017年の8月、京都のセンター「ダンマバーヌ」でした。

きっかけ

17年勤めた会社を辞めた時、友人から「ヴィパッサナーに行ってみるのもいいかもね」と言われて、初めてその存在を知りました。

その友人は私よりもひと回り以上年下ですが、小学校の先生を辞めて、世界のエコヴィレッジを訪ね歩き、現在は長野の山奥で女ひとりパーマカルチャーを実践し、沢水を引き、米を育て、野菜を育て、時々家庭教師をして自給自足の生活をしている信頼できる女性です。

「スマホも本も紙もペンも預けて、すべての情報から隔離され、誰とも話しちゃダメ。アイコンタクトもジェスチャーもダメで、ひたすら毎日瞑想するの」って聞かされ、「誰ともしゃべらなくてもいい」+「情報遮断」の10日間にものすごくひかれました。

とはいえ、「瞑想ってなんか宗教っぽいし、怪しい集団だったらどうしよう」とか「瞑想しているつもりが、洗脳されてたらどうしよう」という不安や警戒心もありました。

でも、「あの彼女」が行って経験して、今こうして普通に生活してるんだから、きっと大丈夫なはず。そう思って参加を決めました。
たぶん彼女から聞かなければ、行かなかっただろうと思います。

少しでも怪しかったら、噛みついてでも逃げ出してやる! そう決心して、鼻息荒く挑みました。

京都のヴィパッサナー瞑想センターへ

日本のヴィパッサナー瞑想センターは京都と千葉にあります。ウチからは千葉の方が近いけれど、やっぱり瞑想なんだから京都でしょ、という禅寺的なイメージで、京都を選んだのですが、夏の京都はものすごく暑いのを忘れていました。
京都駅、着いたら41℃、失敗! と思いましたが、京都のセンター「ダンマバーヌ」のある丹波の山奥はそんなに暑くない。っていうか、朝夕はちょっと寒いくらい。
瞑想ホールは冷房も効いてて、私的にはちょっと肌寒かったです。

初日 Day0

16:30 コースの受付を済ませ、貴重品や携帯など、全てを預けます。
まわりの参加者を見ると、怪しい雰囲気は全くなく、外国人もいて、なんかバックパッカーでアジアでヨガな雰囲気? 宗教っぽい感じが少しもなくて、ちょっと安心しました。

指示された私の宿泊部屋は、メイン棟の1階、ベットが7つ並んだ大部屋でした。しきりなどはないので、ルームメイトに着替えもすべて見える状態です。

18時。食堂に集まり、軽い夕食ということでお蕎麦が出されました。夕食が食べられるのは、この日だけです。
19時から食堂1階で男女合同のオリエンテーションがはじまり、コース中の注意事項など説明を受けます。その後、キッチン奉仕者男女5名ずつの紹介が簡単にありました。

20時から瞑想開始。初めて瞑想ホールに入ります。超緊張の瞬間。
前の方の席の人から順番に入っていきます。2回目以降の参加者が男女約10人ずつ、初めての参加者は男女約20人ずつ。
前方にはアシスタントティーチャーの年配の男女が座っていて、外国人男性と日本人女性のご夫婦でした。女性は兼高かおるや大内順子のような雰囲気で威厳のある素敵な人。男性は白人男性でした。

この2人がゴエンカ氏の生前の録音テープを流してくれて、それに従って私たちは瞑想します。初日はなんだかよくわからないまま1時間座って終了。各自部屋に戻って、就寝となりました。

「聖なる沈黙」がはじまる

この初日の20時の瞑想から、しゃべっちゃダメの「聖なる沈黙」が始まります。
瞑想に集中するため、10日目まで沈黙しなくてはならないのです。しゃべるだけでなく、人と目も合わせていけない。アイコンタクトもジェスチャーも禁止。人に触れてもいけない。人にぶつかっても、「すみません」も言っちゃダメ。

これが超ラク
目も合わせなくていい=全員を無視してOK!
人に気を遣うことが一切なく、シャワーの順番とか、食事に並ぶタイミングとかを、流れがスムーズになるよう自分の動きに気をつけるくらいで、人に気を遣わなくていいのがものすごく楽。愛想笑いもしなくていい。気配りが苦手な私には、天国でした。

そして下界にも、一切連絡取れませんと言い切ってきたので、対処すべきことが起きない。
ネットもテレビもすべての情報を断ち、天気もニュースもわからない。ネットからの開放感半端なし。

Day1〜Day3 アーナーパーナ瞑想


毎朝4時に鐘の音で起床。4時半からホールで瞑想をはじめます。
瞑想は1時間ごとに5〜10分の休憩を挟んで行われ、10時間の瞑想のうち数時間は、ホールで瞑想を続けても、自分の部屋に戻って瞑想してもいい自由瞑想になります。

最初の3日半は、自分の呼吸に気づく瞑想「アーナーパーナ瞑想」を行います。

āna(アーナ)は入息、apāna(アパーナ)は出息の意味。
自分の呼吸をずっと観察する瞑想で、鼻の下、唇の上を息が出たり入ったりする自然な呼吸の様子を、ずっと観察するだけ。
毎日無言で、自分の呼吸をただただ観察します。

ところがこれが超難しい。心が暴れ回る。
ちょっとも呼吸を観察してくれない。観察を始めても数秒後には夢想を始めている始末。

昼ごはん何かな〜? そういえばアイツあの時… あーあ、やだやだ 帰りに京都観光しよ〜 あの時アタマきたよなー ドスドス歩く品のない足音うるさいわー  
過去へ未来へ飛び回る自分の心=感情との追っかけっこです。
これをただひたすら、3日と半日続けます。

よくある「吐いて〜、吸って〜」のように呼吸をコントロールするのもダメです。
アーナーパーナ瞑想は、呼吸法ではないので、息を調節してはいけません。
ただ自然のままの自分の呼吸を、ありのままに観察するのです。

鼻から入って鼻から出ていく、温かい空気が皮膚に当たる、冷たい空気が鼻の穴に入っていく、皮膚にあたってうぶ毛が揺れる、あ、鼻毛が動いた…。その様子の観察に全神経を集中させる。
それ以外は何もしない。何もしなくていいのは楽。

心が暴れ回るのを座布団のせいにして、あれこれ座位を変えたり、座布団を重ねたりしてベストポジション探しに迷走逃避しつつも、アーナーパーナ瞑想をぎこちなく続けます。

瞑想中の姿勢は基本なんでもいいのですが、足が痛くなると体育座りでやり過ごすことが多くなり、体育座りで瞑想しているといつの間にか寝てしまう…。
するとコースマネージャーがいつの間にかスッと横にやって来て、小声で「〇〇さん…」と起こしてくれます。板で肩を叩かれたりはしません。〇〇部分は、苗字ではなく下の名前で呼ばれます。友達じゃない人に、下の名前で呼ばれるって、なんか新鮮。

呆れるほど落ち着きない心も、強制的に毎日10時間、毎日4時に起こされて9時半に寝るまで、ひたすら10時間。呼吸に気づくよう努めていると、少〜しずつ、少〜しずつですが、こんな私でも落ち着いてくるのです、暴れ馬が。

これ、家では絶対に無理だし、飽きてすぐやめちゃう。
でも、こうやって10日間センターにこもって、仕方ないながらもやり続けることで、凡人でもできるようになるものなのですね、10日間隔離されるコースの効果を実感。

このあたりで、この合宿は怪しくないと確信が持て、せっかく来たんだから全力で頑張ろうって気持ちになりました。

部屋に戻って自室で瞑想もOK

ストイックに10時間ガッツリ瞑想するのかと思ったら、少しお休みしつつ瞑想するもアリでした。
最初のウチは1時間じっと座っているのが苦痛だったので、自由瞑想の時間は、部屋に戻ってベットの上で、壁にもたれて瞑想したりしていました。
しかーし、同室の人が思いっきり横になって寝ていて、しかもガーガーイビキをかいちゃうので、結局ずっとホールで瞑想していました。

毎晩19時からの講話

毎晩19時から講話を約1時間半聞きます。
ブッダの話など、内容はとても面白くて、メモをとりたくなるような、ためになるお話しです。
ただ、ちょっと長い。
毎回1時間は楽しく聞いていられるのだけど、残りの15分〜30分が辛くって、トイレも心配でした。そしてこの時間になるともうかなり疲れているので、フッと気づくと寝落ちしていたりして、意識が飛んでいることも多く、聞き逃すことが多々ありました。

唯一の楽しみは食事

5つの戒律で殺生はダメなので、食事は菜食です。
朝6時半と11時の2食+17時のティータイムには果物食べ放題。夜ごはんはなしです。
朝も昼も食べ放題なので、最初の頃は体力つけようとガッツリ食べてしまい、瞑想中に猛烈な睡魔に襲われました。ガックンガックン首が鞭打ちになりそうだったので、食べる量は途中からセーブしました。

洗濯と庭が気分転換

毎日、手洗いでする洗濯と、ガーデンテラスに寝転んで空を見るのが気分転換でした。

曇り空をジッと見てると、眼球についたホコリが見えることにも気づきました。

そして何より夢中になった洗濯。

手洗いで洗濯なんて、やったことありませんでしたが、これがめちゃくちゃ面白い。冷たい水がジャーっと手にあたる感覚。洗濯物の布に水がジュワッと染み込む感覚。洗剤がブワブワ泡立っていく様子。その全てが面白い。もうなんなの洗濯、面白過ぎ!ってくらい五感を楽しませてくれたのです。やばいくらい洗濯が面白かったわー

Day4〜 ヴィパッサナー瞑想

4日目からは、ヴィパッサナー瞑想法を実践します。今度は全身の身体の表面の感覚に気づく作業です。

頭のてっぺんから足の先まで、順番に身体の表面の感覚を探っていきます。特別な感覚ではなく、熱いとか冷たいとか、痒いとか痛いとか、膨張してるとか、ムズムズするとかペコペコしてるとか、とにかくそこに起きている普通の感覚だけに集中する。

そして毎日3回、1時間ずっと動かない瞑想も始まりました。8:00〜、14:30〜、18:00〜のグループ瞑想それぞれ1時間は、動いちゃダメなのです。目を開けるのもダメ。瞑想が恐怖に!

ダメって言われると緊張して、トレイに行きたくなって、漏らしちゃったらどうしよう、お腹痛くなったらどうしようって恐怖で、冷や汗たらったら。

もうこの恐怖の3時間の前は、おしっこを絞り出し、水の摂取も制限して挑みました。これはみなさん、本当に緊張しちゃうところです。

動いちゃダメって言われると、もう、足の痺れがものすごく大きなものになって私に訴えてくる。
「痛いよー、足痛いよー、動かしてよー」って。
微妙に体重を移動させて、しのぐ技を習得。(涙)

Day7〜Day10

できないながらも、瞑想するしかやることないから、訳わからずグリグリ感覚を追い続けていたら、7日目あたりで急に心が鎮まり、1点にスッと集中できるようになりました。急にです。なんか真綿にグルンと包まれて、シーンと静かになったような感覚?
身体の感覚を追うことに集中できるようになると、足の痛みが自分の感覚とは別個の切り離された感じになって、意識がそちらに行かなくなり、結果として痛みを全く感じなりました。

心が静まると、急に背骨もシャンと立つようになり、座位がガシッと安定しました。座るだけで体幹が鍛えられた感じです。こうなると何時間でも座っていられそうな気分になります。
3時間の動いちゃダメ瞑想も、トイレの心配は手放せなかったけど、集中して座れば辛さを感じないことがわかったので、大丈夫になりました。

逆に「修行できるのもあと2日です」と講話で言われた時には、焦ってしまい、急に身体が硬くなりました。
「お? なに焦ってんだ、私。楽しめ!」と何度か自分を励まして瞑想を続けました。

集中できるようになると、瞑想中に頭のテッペンから足の先に意識を動かすと、それがセルフマッサージのような感じになって、特に背骨が気持ちいいのです。体幹マッサージ?
この気持ちよさに執着したら、ヴィパッサナー瞑想的には「アウト!」なのですが、「あれー、このセルフマッサージいいわー」と思っちゃたのは事実です。

Day10 メッターバーバナー

10日目の午前。新しい瞑想を行います。メッターバーバナー瞑想=慈悲の瞑想です。
内側に集中してきた意識を、自分の周囲へ、世界へ、生き物すべてに向けていき、感謝と慈悲のエネルギーを広げる瞑想です。

このあと「聖なる沈黙」が解かれます。11時のランチタイムからおしゃべり解禁。
でも私的にはこのまま黙って去りたいと思っていたので、正直、喋るのが苦痛でした。

が、一緒の部屋のルームメイトの一人が
「私、40過ぎてから結婚しようと決意し、行動したら結婚できました」って自己紹介をして、そこからソロ女子4人、話が超盛り上がり、もううるさい、うるさい。
深夜までおしゃべりが止まらなくなり、コースマネージャーに何度も怒られてしまいました。

最終日

最終日は5:30からの朝の瞑想で、メッターバーバナー瞑想を奉仕者も含めて全員で行います。
これで瞑想コースは終了です。
帰り支度を整え、朝食を取ったら、みんなで次のコースに参加する人のために掃除をします。

10日間を終えての感想

まず、瞑想そのものが初めてだったから、黙って座ること自体も新鮮だったし、毎日、今日は何をやるんだろう、どうなるんだろうって常に未知との遭遇で、本当に楽しかった。
この部分は初回限定の楽しみですね。
これから始めてヴィパッサナーを体験する人には、できれば何も予備知識なく自分の体験だけを信じて参加することをお勧めします。

「瞑想」って、ただ座って耐え忍び、軟弱な心を鍛える修行だと思っていたのですが、ヴィパッサナー瞑想はちょっと違っていました。

最初の頃は座ること自体が苦痛だったけど、苦痛を無視してずっと続けていると、足のしびれとか苦痛に意識が行かなくなり、苦痛そのものが消えていってしまう。
そのことを、理論的に科学的に、自分の身体で確認するための瞑想でした。

そして、そこから自分発見が始まりました。

突然、小学校時代の忘れ去った同級生のこととかがフッと浮かんできて
え? いまなんで彼女? ってことが、フラッと浮かび上がってくるのです、自分の意識に。
「ほー、私ってそんなこと気にしてたんだー」と自分に自分でビックリです。
毎日、そんな感じで気づきがたくさんありました。

私は今まで、常にあれこれ考えていて、心配したり、カリカリしたり、イライラしたり、ちょっと嬉しいことがあると大喜びし、逆に嫌なことがあると思いっきり落ち込み、昔のことを反芻しては思い出し怒りをしたり、ずっと心のクセに振り回されていて、常に今を生きていなかったということに気づかされました。

ヴィパッサナー瞑想は、心だけでなく身体のメンテにもなりました。
私は背骨が歪んでいて姿勢が悪く、治らないと思ってたけど、ちょっと改善しました。
ATにも言われましたが「変わるの、必ず」なんですね。
心身ともにリフレッシュできて、私には本当にいい体験でした。

瞑想後のびっくり体験

10日間の瞑想コースを終え、帰りの電車の中で、人の声や音がとても大きく聞こえるのに少し違和感を覚えつつ、東京に帰る前に京都観光へ向かいました。

下鴨神社をお参りし、神社グッズを物色していたら「〇〇さん…」と声が。
聞き覚えのあるその声に、とっさに「寝てません」と反応してしまった私。
そう。声の主は、10日間お世話になったコースマネジャーさんではありませんか!
ビックリー! 驚き! どーしたんですかー?
「ヴィパッサナーを受けると、こういうことがよくあるんです」だって。
本当にビックリしたけど、こんなところで偶然会えるなんて、嬉しかったわ〜

そしてこのビックリ体験を、同室だったルームメイトたちにメールでお知らせしたところ、その中の1人が、「実は私もそこにいました。お二人を見かけたのですが、待ち合わせの時間に遅れそうだったので、声を掛けられずにスルーしました」って返信が。

えーーーー!
あの瞬間に、あの場所に3人居合わせたの?

うーん、だから何?なのですが、ちょっとすごい偶然ですよね。

ちなみにゴエンカ氏によると、ヴィパッサナー瞑想に参加すると、「あれ? この人どっかで会ったことがある?、と思うことがよくあるそうで、それは前世で一緒にヴィパッサナーをやったことがある人だから」と言うお話がありました。

「前世」に関しては、微妙ですが、ヴィパッサナーの講話の中では、「人間は肉体は滅びても意識はそのまま続いてく、死んだ瞬間に生まれ出る」という話がありました。そこの部分は、そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないし、私にはわかりません。

以上です。

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