4. ダンマーヌパッサナー 心の中の動きの観察 : C.6つの感覚器官とその対象物

C. 6つの感覚器官とその対象物

修行者たちよ。修行者は、6つの感覚器官とその対象物について、心の中の動きを観察し続けるのです。

では、どのように6つの感覚器官とその対象物について、心の中の動きを観察するのでしょう?

修行者は、このように感じて生きるのです。

が光景(色と形)を捉えた時、これらによって束縛が生じるのを自覚します。まだ生じていない束縛が、どのように生じるかを自覚し、いま生じている束縛が、どのように消滅するかを自覚します。消滅した束縛が、将来、どのようにすれば生じないかを自覚するのです。

耳が音を捉えた時、これらによって束縛が生じるのを自覚します。まだ生じていない束縛が、どのように生じるかを自覚し、いま生じている束縛が、どのように消滅するかを自覚します。消滅した束縛が、将来、どのようにすれば生じないかを自覚するのです。

が匂いを捉えた時、これらによって束縛が生じるのを自覚します。まだ生じていない束縛が、どのように生じるかを自覚し、いま生じている束縛が、どのように消滅するかを自覚します。消滅した束縛が、将来、どのようにすれば生じないかを自覚するのです。

が味を捉えた時、これらによって束縛が生じるのを自覚します。まだ生じていない束縛が、どのように生じるかを自覚し、いま生じている束縛が、どのように消滅するかを自覚します。消滅した束縛が、将来、どのようにすれば生じないかを自覚するのです。

が感触を捉えた時、これらによって束縛が生じるのを自覚します。まだ生じていない束縛が、どのように生じるかを自覚し、いま生じている束縛が、どのように消滅するかを自覚します。消滅した束縛が、将来、どのようにすれば生じないかを自覚するのです。

心が思考を捉えた時、これらによって束縛が生じるのを自覚します。まだ生じていない束縛が、どのように生じるかを自覚し、いま生じている束縛が、どのように消滅するかを自覚します。消滅した束縛が、将来、どのようにすれば生じないかを自覚するのです。

このようにして心の中の動きを、内面からありのままに観察し、または外面から、あるいは内面と外面を同時に観察するのです。心の中の動きが生じる現象を観察し、または心の中の動きが消滅する現象を、あるいは心の中の動きが生じては消える現象を、観察し続けるのです。そうして「すべての物事は、絶え間なく変化し続ける現象に過ぎない身体は身体に過ぎない。私でもなく、私のものでもなく、自分でもない」という気づきが確立されるのです。この智慧と気づきがある限り、この世に自分など存在しないのだから、存在しない自分が執着していた「苦悩」もなくなるのです。

修行者たちよ。修行者は、このようにして心の中の動きを心の中の動きにおいて観察し、生きるのです。

4.ダンマーヌパッサナー(心の中の動きの観察)C.6つの感覚器官とその対象物 了

解説

部屋の中にある椅子に意識して目を向けたとき、室内の光景の中から、目が捉えた椅子だけが切り取られ、「椅子」という知覚が生じます。こうして、ひとつの個体が作り出されます。

このとき、にはただ、対象である色や形が映っているだけで、「椅子」と識別しているのは知覚のはたらきです

知覚が「物体という概念」を作り上げているのです。

すでに存在している物体を、私たちがそのまま認識しているわけではないのです。
本来、他との関係なしに、それ自体で存在する物体は、この世に1つもありません。

名前をつけ、色形を手がかりにして、空間の中で識別しているに過ぎないのです。
すべての物体は、他との関係性の中でしか存在しないのです。

例えば、先生、犬、猫といった個体も、1匹のアリから見たら、空間にうごめく一部でしかないかもしれません。宇宙のすべてが、それぞれの生命体が勝手に識別している概念なのです。世界は、それぞれの認識によって形づくられているのです。

感情や感覚が現れたら、分析したり排除したり(=思考)せずに、ただ「そのような感情や感覚がある」と認識するだけにします。

思考を心から追い出そうとするのではなく、ありのままに観察し、過度に関わらないことが大切です。

恐れたり、避けたり、抵抗したりすることなく、思考が関与しない静かな興味をもって、感情を体験するのです。

そうすると、どんな体験が起こるのかーーブッダの言葉を借りるなら、「私の言うことを信じないで、自分で体験してみてください」ということです。

私たちは、自分が思考を生み出し、感情を感じ取っていると思い込んでいますが、実際には体験が起きているだけなのです。その体験の中に、「言葉や映像としての思考」が自然に生まれ、そして消えていくだけなのです。

つまり、感情そのものが苦しみをもたらしているのではなく、それに対してつけた名前やレッテル、そこから広がる物語が、大きな痛みを生み出しているのです。

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