瞑想とは

瞑想とは、心を深く集中させる練習です。注意力や意識を鍛え、精神的にクリアで、感情的に穏やかで安定した状態になることを目指す、東洋の精神修養法です。

「目を閉じてじっと動かずに静かに坐る」「何も考えず無心になる」といったイメージがありますが、瞑想は心身の静寂を取り戻すために、日常的に行う心の訓練です。

19世紀以降、瞑想は欧米文化にも広まり、ビジネスや健康など精神的なものではない場面でも応用されるようになりました。現在の瞑想は、ストレスや不安、うつ、痛みを大幅に軽減し、平和、知覚、自己概念、幸福感を高めたり、心身の健康に効果があるものとして実践されています。

瞑想のはじまりは、古代インドの「ヨーガ」

東洋における瞑想は、元々は古代インドの伝統的な修行法「ヨーガyogaがはじまりです。

私たちがイメージする現代のヨーガは、身体的ポーズ「アーサナ」を中心としたエクササイズですが、本来は古代インド発祥の伝統的な宗教(バラモン教、ヒンドゥー教、ジャイナ教など)の瞑想を主とする精神修養です。

心身の感覚器官を鍛錬によって制御し、精神統一することで心の動きを停止させ、古代インド人の究極の目標であった輪廻からの解脱に至ろうとするものです。アーサナはその準備段階として、脳と感覚をつなぐ神経が通る背骨をほぐし、背骨を支える体幹を強化したり、股関節の柔軟性を高めるためのポーズです。

輪廻からの解脱はかつては、「正統バラモン階級(インド・カースト制度の最高位)の男性のみが行える儀式によって可能となる」とされていましたが、それを「誰でも実践できる修行法『ヨーガ』によって達成できる」と考えられるようになったのが始まりです。

このサイトで取り上げるブッダが説いた瞑想法も、この本来のヨーガと同じです。極めることで、瞑想以外では到達不可能な深い自己洞察や対象認知、智慧の理解、さらには悟りの最終段階「涅槃(解脱)」に至る瞑想です。

ただし、ブッダ以前、つまりヨーガの瞑想では、心の働きを停止させる「サマタ瞑想」によって輪廻から解脱できると考えられていましたが、ブッダはそれを否定しました。

ヨーガの瞑想法は、「呼吸を調整しながら、あるものに集中瞑想し、ついには恍惚状態となってその対象と合体する技法」です。この時の恍惚状態(ジャーナ)で得られる達成感を、古代インドの人々は解脱と勘違い偽涅槃)したのです。

ブッダは「この瞑想法では一時的な解放感しか得られない、瞑想が終われば元に戻って心は動揺してしまう」と気づき、6年後に「ヴィパッサナー瞑想および常に気づきをもって生きることによってのみ、心が完全に浄化され、輪廻から解脱できる」と発見したのです。

瞑想は心のトレーニング

瞑想は誰でもできる心のトレーニングです。過去を忘れたり、未来を考えないことではありません。無闇に過去や未来に心を奪われずに、しっかりと現実にとどまることで、必要な時には過去を思い出し、未来のために決断を下す能力を培うための、合理的かつ実践的な道具です。

瞑想は現実逃避の手段ではありません。現実の問題に超常的な解決がもたらされたり、スピリチュアルな体験を期待して行うものではありません。そのような考えを持って瞑想を行うと、自分を特別だと思い上がったり、現実社会に価値を見出せなくなり、実生活の破綻が起こることもあり得ます。

瞑想の坐り方と姿勢

通常のあぐらでOKです。

ヨーガや坐禅のように、蓮華坐半蓮華坐に組む必要はありません。蓮華坐は両脚を重ねて組む坐り方で、半蓮華坐は片脚だけを重ねます。どちらも脚を重ねて組むことで、坐骨と両膝で身体を支える坐り方ですが、股関節や足首の柔軟性が必要です。この座位が自然にできる人は姿勢が固定されて楽なのですが、瞑想者にはそこまで必要ありません。

自分が一番楽で、長時間坐れる坐り方がいいのです。椅や座椅子に坐ってもOKです。

それよりも何よりも、骨盤を起こして、背骨をまっすぐにすることが大切です。

多くの人が、骨盤が後傾し、それに伴って背骨が丸く曲がって猫背になりがちです。また、まっすぐに坐っているつもりでも、実際には上体が前傾していることが多いのです。

骨盤をグッと起こして坐骨で座るようにします。頭のてっぺんから糸で吊られているような感じで、上体をまっすぐ上に引き伸ばします。さらに上体を、少し後ろに倒すようにするといいと思います。背中を壁につけて、一度確認してみてください。

ヴィパッサナー瞑想の合宿コースに参加すると、毎日10時間坐ることになりますが、不思議なもので、7、8日目辺りで自然に背骨がまっすぐ立つようになります。これは瞑想を真面目に実践していれば、誰でもそうなります。教えられなくても自然にそうなります。

なぜ背骨をまっすぐにすることが大切かというと、背骨の中を通る脊髄に神経が通っているからです。ヴィパッサナー瞑想では、身体中の感覚を詳細に観察しますが、身体中の神経が滞りなくスムーズに流れている方が、観察しやすいのだと思います。

3種類の瞑想法

瞑想にはさまざまな種類がありますが、ブッダの時代からある伝統的な瞑想法は、心を1つに集中するサマタ瞑想、深く洞察するヴィパッサナー瞑想、そして愛と慈しみを育むメッター・慈悲の瞑想の3つです。

1. サマタ瞑想 samatha-bhāvanā

心を1つに集中して精神統一する瞑想法です。サマタ瞑想にはいろいろな種類がありますが、その1つが呼吸に集中する「アーナーパーナ瞑想(ānāpāna sati)」です。アーナーパーナ瞑想は、子供が実践しても害のない安全な瞑想法です。
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2. ヴィパッサナー瞑想 vipassanā-bhāvanā

心の奥深くまで、意識・無意識・潜在意識のレベルまで観察する洞察の瞑想です。
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3. メッター・慈悲の瞑想 mettā-bhāvanā

慈しみの心を育む瞑想法で、すべての存在への思いやり・優しさを育む瞑想です。
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