E. 身体を構成する物質的要素について
さらにまた、修行者たちよ。この身体がどのような構造になっていても、主要元素で構成されていることを、この身体そのものをじっくりと調べて、こう考える。
「この身体は、土の要素、水の要素、火の要素、風の要素でできている」と。
熟練した肉屋かその見習いが、牛を屠殺して肉の塊に解体し、四辻が交わる交差点に座っているようなものである。修行者たちよ。これと同じように、この身体がどのような構造になっていようとも、主要元素で構成されているものとして、この身体をじっくりと調べて、こう考える。「この身体は、土の要素、水の要素、火の要素、風の要素でできている」と。
このようにして身体を、身体の内側からありのままに観察し、または身体の外側から、あるいは身体の内側と外側を同時に、観察するのです。身体が生じるという現象を観察し、または身体が消滅するという現象を、あるいは身体が生じては消えるという現象を観察し続けるのです。そうして「すべての物事は、絶え間なく変化し続ける現象に過ぎない。身体は身体に過ぎない。私でもなく、私のものでもなく、自分でもない」という気づきが確立されるのです。この智慧と気づきがある限り、この世に自分など存在しないのだから、存在しない自分が執着していた「苦悩」もなくなるのです。修行者たちよ。修行者は、このようにして身体を身体において観察し、生きるのです。
1.カーヤーヌパッサナー(身体の観察)E.物質的要素 了
解説
「dhātu 物質的要素」とは、身体を構成する4つの要素のことで、地(固体)、水(液体)、火(熱エネルギー)、風(運動)の4つです。このうちの3つ、液体・熱エネルギー・風は、潜在的に活性化しています。
通常、潜在的な形として存在する要素が刺激されて現実化することで、現象が起こるとされています。例えば火は、どこにでも存在する火の要素が刺激されることで発生します。刺激が終わると、要素は潜在的な状態に戻り、現象は終わります。つまり、すべての現象は、刺激に依存しているので、本質的に不安定なものであり、刺激が終わると、それに対応する活動も収まり、変化します。
身体の観察の、B. 身体の「動作」は風の要素です。D. 不浄についての「筋肉や臓器」は土の要素、「血液や体液」は水の要素です。そして怒りや気力など「心の動き=活力」が火の要素です。
ここで観察する対象は、「万物はこの4つの元素から成る」という古代ギリシア、ローマ、イスラム世界、そして古代インドで支持されてきた四元素のことです。中国では、土・金・水・木・火の五行説となりまする。アリストテレスは、地上は四元素で、宇宙は+エーテルという説を唱えています。
土(地):冷・乾、固体、重さ(堅さ、保持・安定)筋肉・臓器、(牡牛・乙女・山羊座)
風(気):熱・湿、気体、動き(揮発・軽さ)呼吸・気、(双子・天秤・水瓶座)
水(液):冷・湿、液体、湿り気(流動)血液・体液、(蟹・さそり・魚座
火(熱):熱・乾、熱さ、エネルギー・活力(牡羊・獅子・射手座)