10. Kappamāṇavapucchā カッパ青年の質問
河童の質問ではありません。尊者カッパの質問です。
SN-5-10-1098
‘‘Majjhe sarasmiṃ tiṭṭhataṃ, 中に 流れの 立つ人々に (iccāyasmā kappo) と尊者 カッパは Oghe jāte mahabbhaye; 激流が 生じた時 大いに・恐怖 Jarāmaccuparetānaṃ, 老い・死・苦しんでいる人々に dīpaṃ pabrūhi mārisa; 洲を どうか・説いてください 先生 Tvañca me dīpamakkhāhi, あなたは・そして 私に 洲を・示してください yathāyidaṃ nāparaṃ siyā’’. ような・これが ない・次の 存在する
尊者カッパ:
洪水の流れの中で
強い怖れが生じた
人々のために、
老いと死に
苦しんでいる
人々のために、
先生、どうか私に
再び生まれ変わらないように
島を示してください。
解説
ogha:暴流・激流・洪水。dīpa:洲(川の中にできた島)。転じて「助け・サポート・避難場所」のこと。「洪水(激流)の流れ」とは人生を表していると思います。
SN-5-10-1099
‘‘Majjhe sarasmiṃ tiṭṭhataṃ, 中に 流れの 立つ人々に (kappāti bhagavā) Oghe jāte mahabbhaye; 激流が 生じた時 大いに・恐怖 Jarāmaccuparetānaṃ, 老い・死・苦しんでいる人々に dīpaṃ pabrūmi kappa te. 洲を 私は教える カッパよ あなたに
ブッダ:
カッパよ、
激流の流れの中で
強い怖れが生じた
人々のために、
老いと死に
苦しんでいる
人々のために、
カッパよ、
私は君に島を示す。
SN-5-10-1100
‘‘Akiñcanaṃ anādānaṃ, 無所有 無執著 etaṃ dīpaṃ anāparaṃ; これが 洲 ない・他は Nibbānaṃ iti naṃ brūmi, 涅槃 と それを 呼ぶ jarāmaccuparikkhayaṃ. 老い・死・滅尽
ブッダ:
何も持たない
何にも執着しない。
これが島であり
他にはない。
これを私は涅槃と呼ぶ
それが老いと死を克服する。
解説
説明すればするほど、物事は複雑になって、わかりにくくなり、さらに補足が必要となりますが、この教えはシンプルでわかりやすい教えだと思います。
無所有=何も所有しないのではなく、所有しているものが自分のものだという意識がない、ということです。
無執着=何にも執着しなければ、それに束縛されることもなくなります。=完全に解放されて自由です=涅槃です。だから「老いも死も」気になりません=「老いと死の克服」です。
SN-5-10-1101
‘‘Etadaññāya ye satā, このことを了知して 彼らは 気づいて diṭṭhadhammābhinibbutā; 見た・真理を・涅槃に至った人々 Na te māravasānugā, ない 彼らは マーラ・支配・従う人々 na te mārassa paddhagū’’ti. ない 彼らは マーラの 奴隷 と
ブッダ:
このことをよく理解した上で
彼らは気づきをもって
真理を見出し涅槃に至った人々は
マーラの支配に従うことなく
マーラの奴隷にはならない。
このようにブッダは言いました。
解説
何かに執着することは、結局それにとらわれて心が束縛されている状態です。つまり奴隷になっているのです。
例えば、理不尽な目にあった時、その相手に対してずっと怒りが収まらない状態は、その相手に執着している状態であり、心が束縛されています。つまり相手の奴隷だということです。同様に、大好きな人に対して、募る思いがずっと心から離れないのも、恋の奴隷です。
SN-5-10-1102
Kappamāṇavapucchā dasamā niṭṭhitā. カッパ・青年・質問 10番目 終わり
10. カッパ青年の質問 終わり
まとめ
「人は必ず老いて死ぬ」という事実を、受け入れられますか? 「自分は理解できている、老いも死もちょっと不安はあるけど、まあ仕方がない受け入れる」と思っている人でも、自分の親が老いて死ぬことについてはどうでしょう?
自分を守ってくれる大きな味方だった父や母が、衰えていく姿を見るのは忍びないものです。ひと回り小さくなった母の背中、弱々しく歩く父の姿、「親が老いる姿は見たくない」という思いがもしあるのなら、それは「人は必ず老いて死ぬ」という事実を受け入れられないということです。これが無知です。
老いや死に限らず、人生の問題は、感情ではなく理性で対応すればいいようです。
人は本来、感情の生き物ですが、その感情が悩み苦しみの原因です。親の介護や認知症を怖れたり、不安になったり、自分の感情で自分を追い詰めるのではなく、感情よりも理性を優先させて、目の前にある現実に真摯に対応していく。行動を起こせば、必ずなんらかの変化が起こり、問題が少しずつでも解決に向かいます。自分の心も和らぎ、気持ちが楽になります。