第4章 8つのこと:7. ティッサ・メッテイヤ 820〜829

7. Tissametteyyasuttaṃ ティッサ・メッテイヤのスッタ集

このスッタ集は、尊者ティッサ・メッテイヤとブッダの「性欲」についての問答集です。ティッサ・メッテイヤは、千人の弟子たちを連れてブッダを訪ねました。

このスッタ集は「性欲」がテーマです。出家修行者は「性交渉は避けるべきである」というブッダの教えですが、どうしてなのでしょうか。

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‘‘Methunamanuyuttassa,
性交・従事する者の
(iccāyasmā tisso metteyyo) 
と・尊者 ティッサ メッテイヤは
vighātaṃ brūhi mārisa; 
破滅を 語りなさい 先生
Sutvāna tava sāsanaṃ, 
聞いて あなたの 説教を
viveke sikkhissāmase.
遠離を 学ぶ・しよう

尊者ティッサ・メッテイヤは:
性行為をすると
なぜ破滅するのか
教えてください。
先生、あなたの戒めを聞いて
隠遁について学ぶとしましょう。

解説

ティッサ・メッテイヤの師匠は、ブッダではなくバラモンのバーヴァリーです。彼にとってブッダは自分の師匠ではないので、先生と呼んだようです。

SN-4-7-821

‘‘Methunamanuyuttassa, 
性交・従事する者の
(metteyyāti bhagavā) 
メッテイヤ・と ブッダは
mussate vāpi sāsanaṃ;
忘れる あるいは・また 説教を
Micchā ca paṭipajjati,
邪悪に と 向かって行動する
etaṃ tasmiṃ anāriyaṃ.
これは 彼にとって ない・聖なること

ブッダはメッテイヤに:
性行為をすると
教えを忘れて
間違った方向に行動し
聖なる道から外れるのです。

解説

日本に伝わった現代の仏教では、お坊さんは肉食妻帯世襲制ですが、ブッダの教えでは、いずれもあり得ません。出家者は、一切の性行為(自慰行為を含む)は禁止です。在家者は、妻以外の女性と性交渉をしてはならない、という戒があります。
 
ブッダの教えによると「異性に対する欲は五欲全部である」そうです。目で見つめ合い、甘い声色やささやく言葉を聞き、漂う甘い香りに誘われ、口唇を重ね合わせて、肌を触れ合う。確かに、五感を総動員です。しかも心まで持っていかれるのです。つまり6つの感覚のすべてが、外の世界に支配されてしまいます。だからブッダは「あらゆるものにとらわれない」修行中である出家修行者に、性行為を禁じたのです。

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‘‘Eko pubbe caritvāna, 
一人で 前に 行いながら
methunaṃ yo nisevati;
性交に 彼が 従事するなら
Yānaṃ bhantaṃ va taṃ loke, 
乗物が 迷走する あるいは 彼を 世間は
hīnamāhu puthujjanaṃ.
劣る・される 凡人と

以前は一人で行動していたのに
性行為にふけるようになると
それは暴れ馬のようなもので
世間では下品なことで
つまらない奴と呼ばれるのです。

解説

性欲は人の欲求の1つで、性的な満足を求める本能です。性欲は自然で必要なものだと思われていますが、これは子孫を残すための本能であり、食欲や睡眠欲のように、性行為をしなかったら死ぬ、ということではありません。
 
しかし本能と結びついているのは確かなので、欲望の中でも性欲は非常に強い衝動です。それによって勉強が手につかなくなったり、仕事がそっちのけになったり、あらゆるものに優先順位が変わる欲求で、理性によって制御するのが難しい動物的な欲求なのです。

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‘‘Yaso kitti ca yā pubbe, 
名誉 名声 と その 前の
hāyate vāpi tassa sā;
失われる 実に・また 彼の それは
Etampi disvā sikkhetha, 
これを・また 見て 学びなさい
methunaṃ vippahātave.
性交を 放棄すべきと

これまでの名誉や名声は
すっかり失われてしまう。
これを知って
性行為をやめることを
学びなさい。

解説

性行為にふけると、あらゆることに災いが生じます。人は性行為から得る快感に、強烈に執着します。その性行為を達成するために、すべてにおいて他者よりも自分を優先させるようになります。また、日常生活の中で不満があるとき、人はそのはけ口として性的快楽に依存することもあります。

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‘‘Saṅkappehi pareto so, 
想像に 負けた 彼は
kapaṇo viya jhāyati;
惨めな人 のように 思念する
Sutvā paresaṃ nigghosaṃ, 
聞いて 他人の 評判を
maṅku hoti tathāvidho.
不満 ある その種の人は

うだうだと思い悩み
惨めな姿で妄想にとらわれ
他者からの評判を聞いては
不満を募らせるのです。

解説

性欲は独占欲を生み出します。社会で起こる犯罪の大半の原因は性欲です。幼児虐待、誘拐、殺人、児童売買など、悲惨な犯罪の背後には、必ず歪んだ性欲の過剰なエネルギーがあります。精神病の大半も、やはり歪んだ性欲が生んだものです。そこから生まれる独占欲によって苦しみが増し、人を闘いに追い込むのです。

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‘‘Atha satthāni kurute, 
時にまた 刃を 作る
paravādehi codito;
他者の・論で 責められた者は
Esa khvassa mahāgedho, 
これは 確かに・あるだろう 大・貪欲で
mosavajjaṃ pagāhati.
虚偽に 沈む

また、他者からなじられ
責められた者は
取り繕うようになり
非常に欲深くなり
嘘を重ねるようになる。

解説

satthāni kurute:刃を作って自分を守る=取り繕う。

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‘‘Paṇḍitoti samaññāto, 
賢者と 認められ
ekacariyaṃ adhiṭṭhito;
独りで行動する 保持した
Athāpi methune yutto, 
時にまた 性交に 結びついたなら
mandova parikissati.
愚者のように 引き回される

賢者と認められ
独りで生活していた者でも
性行為をしたなら
愚者のように振り回される。

解説

人生には、あらゆるところに落とし穴があります。すれ違った異性を見て「あ、可愛い」と思っただけでも、アウトだそうです。

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‘‘Etamādīnavaṃ ñatvā, 
これは・賤しいと 知り
muni pubbāpare idha;
聖者は 前と後に ここに
Ekacariyaṃ daḷhaṃ kayirā, 
独りで行動する 堅固に 為すべき
na nisevetha methunaṃ.
ない 耽る 性交に 

これは賤しいことだと理解し
聖者はこの世の最初から最後まで
しっかりと独りの生活を守り
性行為に身を委ねないように。

解説

性行為には大きな快感を伴うため、そのような刺激的な感覚に浸っていては、微細な感覚を感じとることは到底できません。=解脱できません。

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‘‘Vivekaññeva sikkhetha, 
遠離こそ 学ぶがよい
etadariyānamuttamaṃ;
これが・聖者達の最高のもの
Na tena seṭṭho maññetha, 
ない それにより 最高の者と 思う
sa ve nibbānasantike.
彼は 実に 涅槃の・近く

独りで離れて暮らすこと
隠遁を学びなさい。
これは高貴な者にとって
最高のものです。
でもだからといって
自分を最高だと思わないように
涅槃に近づいただけですよ。

解説

人里離れて独りで暮らせば、心を惑わす異性が通りかかることも、エロティックな画像がうっかり目に入ることも、嬌声が耳に入ることもないのです。心が浮き立っては修行にならないのです。

SN-4-7-829

‘‘Rittassa munino carato, 
離れて 聖者たちが 行う
kāmesu anapekkhino; 
欲望を ない・期待
Oghatiṇṇassa pihayanti, 
激流を・渡った 羨む
kāmesu gadhitā pajā’’ti.
欲望に 束縛された 人々が・と

欲望を期待することなく
隠遁生活を行う聖者たちは
欲望に縛られて人々が羨む
激流を渡った存在なのだ。

解説

ブッダが質問に答えると、1,001人の全員がアラハンになったそうです。

Tissametteyyasuttaṃ sattamaṃ niṭṭhitaṃ.
ティッサ・メッテイヤ・スッタ集 7番目 終わり

7. ティッサ・メッテイヤのスッタ集 終わり