12. Bhadrāvudhamāṇavapucchā バドラーヴダ青年の質問
バドラーヴダ尊者の質問は、自分の知りたいことというよりも、自分と一緒に来た弟子たちのための質問です。
SN-5-12-1107
‘‘Okañjahaṃ taṇhacchidaṃ anejaṃ, 住居を・捨てて 渇望・破壊 ない・動揺 (iccāyasmā bhadrāvudho) と尊者 バドラーヴダは Nandiñjahaṃ oghatiṇṇaṃ vimuttaṃ; 楽しみを・捨てて 激流・渡る 解脱者 Kappañjahaṃ abhiyāce sumedhaṃ, 思考を・捨てて 懇願する 賢者 sutvāna nāgassa apanamissanti ito. 聞いて 龍の方の 立ち去るだろう ここから
バドラーヴダ:
家庭を捨て、渇望を断ち切り
何事にも心を動かすことなく
楽しみを避け、激流を渡り
解脱したお方
輪廻を断った賢者に懇願します。
ナーガのお言葉を聞いて
ここから立ち去るでしょう。
解説
kappañjahaṁ = kappaṁ + jahaṁ:kappa(世界の周期・時間・想念=輪廻)jaha(離れる・断つ)と解釈しました。nāgassa:ナーガとは象、または竜のことです。ブッダの生まれであるシャーキヤ族の象徴が、ナーガ(蛇神)であったため、ブッダをナーガと呼んだようです。
バドラーヴダは「ブッダの言葉を聞けば、我々はここから立ち去ります」と宣言していますが、ここで2つの解釈ができると思います。①この場から直ちに立ち去ります。 ②この世から立ち去り、輪廻から離れることができるでしょう。どちらが真意かはわかりません。
SN-5-12-1108
‘‘Nānājanā janapadehi saṅgatā, 様々な・人々が 地方から 集合して tava vīra vākyaṃ abhikaṅkhamānā; あなたの 勇者よ スピーチを 期待して Tesaṃ tuvaṃ sādhu viyākarohi, 彼らのために あなたは どうぞ 説いてください tathā hi te vidito esa dhammo’’. このように 実に あなたは 見出された その ダンマを
バドラーヴダ:
さまざまな人々が地方から集まり
勇者よ、あなたの言葉を
聞きたがっています。
あなたが見出された真理を
どうか説明してください。
解説
さまざまな人々とは、バドラーヴダが引率した弟子たちのことです。
SN-5-12-1109
‘‘Ādānataṇhaṃ vinayetha sabbaṃ, 掴む・渇望を 取り除きなさい 一切の (bhadrāvudhāti bhagavā) バドラーヴダよ とブッダ Uddhaṃ adho tiriyañcāpi majjhe; 上に 下に 横に・さらに・また 中間で Yaṃ yañhi lokasmimupādiyanti, そのもの そのもの・まさに この世で・執着するなら teneva māro anveti jantuṃ. それによって マーラは 近づく 人に
ブッダ:
バドラブーダよ、
上や下や同じなどと
分け隔てることなく中立に、
あらゆるものに対して
しがみつこうとする
渇望を取り除きなさい。
この世で何かを掴もうと
その何かに執着する人に
マーラはつきまとう
解説
Ādānataṇhaṃ:Ādāna(掴む、得る、しがみつく)+taṇhā(タンハー)渇望。タンハーは求め続けるエネルギーであり、常に新たな喜びを求めて快楽と欲に縛られて、苦しみの根源となっています。このエネルギーが次の生命を生み出す輪廻転生の源でもあります。
タンハーには大きく分けて次の3種類があります。感覚的な渇望(kāma-taṇhā)、存在への渇望(bhava-taṇhā)、非存在への渇望(vibhava-taṇhā)です。タンハーについて詳細はこちら
Uddhaṃ(上に・後に) adho(下に) tiriyaṁ(横に・現在に)+ ca・api(さらに・また)majjhe(中間に・現在に)。メッタグーへのブッダの言葉1061と同様に解釈しました。majjheは、極端にならずに偏らず、調和がとれた状態のことです。
SN-5-12-1110
‘‘Tasmā pajānaṃ na upādiyetha, それ故に 了知する ない 執着しなさい bhikkhu sato kiñcanaṃ sabbaloke; 修行者は 気づき 何事も 全ての世界に Ādānasatte iti pekkhamāno, 掴む・執着 と 観察しながら pajaṃ imaṃ maccudheyye visatta’’nti. 人々を これは 死の領域において 絡まる と
ブッダ:
執着してしがみつく
人々を観察して
これが死の領域と
強く結びつくのだと、
修行者はよく理解して
すべての界において
何事にも気づき
執着しないようにしなさい。
とブッダは言いました。
解説
「死の領域」とは、死がある=輪廻のある世界のことで、31の存在界のうちの人間界を含む「11の欲界」のことだと思います。「すべての界」とは、31の存在界すべてのことで、悟れなくてまた人間界や天界に生まれ変わっても、最後の1界のブラフマー界に生まれ変わっても、どの世界に去ったとしても執着しないようにしなさい、ということだと思います。
ということで、このスッタ集の最初のスッタ1107のバドラーヴダの言葉は、「ナーガ(ブッダ)の言葉を聞けば、私たちは安心してこの世を去ることができるでしょう」だったのかと、ここまで読んで思いました。
バドラーヴダは1108のスッタで「さまざまな人々が地方から集まり」と言っているので、バドラーヴダが引率した人々の中には修行がまだまだ浅い人もいれば、解脱間近の人もいたのではないでしょうか。
Bhadrāvudhamāṇavapucchā dvādasamā niṭṭhitā. バドラーヴダ・青年・質問 12番目 終わり
12. バドラーヴダ青年の質問 終わり