第2章 小さな章:7. バラモンの教え③ 301〜308

7. Brāhmaṇadhammikasuttaṃ バラモンの教えのスッタ集 ③

ここからは腐敗し、堕落していくバラモンの様子が語られます。

SN-2-7-301

‘‘Tesaṃ āsi vipallāso, 
彼らに あった 反転
disvāna aṇuto aṇuṃ;
見て 微細な 微細の
Rājino ca viyākāraṃ, 
王 と 華麗さ
nāriyo samalaṅkatā.
婦人たち よく・飾られた

微々たるもの
些細なものである
王の栄華や
着飾った婦人たちを見て
彼らに変化が起こった。

解説

バラモンが得ていた智慧や徳に比べれば、取るに足りない王族の華やかな暮らしを見て、彼らの心に何かが起こったのです。

SN-2-7-302

‘‘Rathe cājaññasaṃyutte, 
馬車 そして・駿馬・つながれた
sukate cittasibbane;
よく・作られた 彩色・刺繍
Nivesane nivese ca, 
住居 住居 と
vibhatte bhāgaso mite.
区分する 部分 測る

駿馬をつないだ馬車や
美しく施された刺繍。
区画に分けられた宮殿やお屋敷。

解説

いつの時代も、立派な車、豪華な衣装、立派な住居が、人の心の欲をかき立てたことが確認できるスッタです。これらを見て、バラモンの心にいったい何が芽生えたのでしょうか。

SN-2-7-303

‘‘Gomaṇḍalaparibyūḷhaṃ, 
牛・輪・囲まれ
nārīvaragaṇāyutaṃ;
婦人・高貴な・群れ・従えて
Uḷāraṃ mānusaṃ bhogaṃ, 
豊かな 人間の 富
abhijjhāyiṃsu brāhmaṇā.
切望・利益 バラモンたちは

牛とその産物に囲まれ
貴婦人たちを従える
豊かな人間の富を見て
バラモンたちは
欲しいと切望した。

解説

苦しみの原因である「」が心に生じたのです。

王族の華やかで、女性を従えて快楽を享受する豊かな暮らしぶりを見てバラモンは、質素な暮らしや苦行、禁欲生活と比べて、自分も富が欲しい、楽しみたいと思うようになったのです。

その気持ち、わからなくないですね。

SN-2-7-304

‘‘Te tattha mante ganthetvā, 
彼の そこで 真言 編んで
okkākaṃ tadupāgamuṃ;
オッカーカ王 それに・近く
Pahūtadhanadhaññosi, 
多くの・財産・幸運
yajassu bahu te vittaṃ;
犠牲すべき 多くの あなたは 富を
Yajassu bahu te dhanaṃ.
犠牲すべき 多くの あなたは 財産を

そこで彼らはマントラを作り
オッカーカ王に近づいて言った。
あなたはたくさんの財宝があり豊かだ。
あなたはたくさんの富を
生贄に捧げよ。
あなたはたくさんの財産を
生贄に捧げよ。

解説

オッカーカ王とは、ゴータマ・ブッダの家系である釈迦族の祖先である、日種族の祖とされています。

バラモンは自分たちに都合よく、ヴェーダの真言であるマントラを新たに編み出しました。驚愕の事態ですが、これは私たちの社会でもよくあることです。何か問題が起きると、自分たちに都合よく物事を進めるために御触れを作るのです。そもそも私たちの見解(diṭṭhi)は、曖昧なものなので、各人の解釈次第で、全く逆にもなり得るのです。強く言った者勝ちの世界です。

SN-2-7-305

‘‘Tato ca rājā saññatto, 
このように そして 王は 説得され
brāhmaṇehi rathesabho;
バラモンたち・然らば 車の・主は
Assamedhaṃ purisamedhaṃ, 
馬の・生贄 人間の・生贄
sammāpāsaṃ vājapeyyaṃ niraggaḷaṃ;
投擲祭 ソーマ・飲むものを ない・制限
Ete yāge yajitvāna, 
これらは 犠牲 供養して
brāhmaṇānamadā dhanaṃ.
バラモンたちに・与えた 財産を

こうして馬車の主である王は
バラモンたちに説得された。
馬や人間が生贄として
ソーマ酒を飲まされ
祭祀で際限なく火に投じられた。
バラモンたちに財産を与え
これらの生贄として捧げられた。

解説

このスッタに関しては、他の翻訳と随分違うかもしれません。どちらが正しいということではなく、このサイトでは、素直にこのように読み取りましたが、「王がバラモンに説得されて、人や馬を生贄とした」という本筋では相違はありません。

投擲(とうてき)とは、手で物を遠くに投げることです。犠牲となる生贄を火に投じることだと解釈しました。

vājapeyyaṃヴェーダの祭祀において、元々はアーリア人の祭祀の捧げものとしてソーマ酒(vāja)が投じられたことから、ソーマ酒を飲まされた生き物=捧げものを指していると解釈しました。

祭式至上主義の始まりです。神々よりも祭式のほうが強力と見なされ、男性バラモン司祭によって正式に行われる祭式は、神々を超えて宇宙も支配すると考えられるようになりました。神々は祭場に呼び出され、そこで唱えられるマントラの呪力によって支配されます。神々に恩恵を求めるのではなく、神々を祭式によって操作することで、願望が実現されるとしたのです。

水平方向だけの侵攻では飽き足らず、垂直方向へも支配しようとしたのでしょうか?

SN-2-7-306

‘‘Gāvo sayanañca vatthañca, 
牛 寝具・と 衣服・と
nāriyo samalaṅkatā;
婦人たち よく・飾られた
Rathe cājaññasaṃyutte, 
馬車 そして・駿馬・つながれた
sukate cittasibbane.
よく・作られた 彩色・刺繍

牛、寝床、衣服に
着飾った婦人たち、
駿馬がつながれた馬車と
美しく施された刺繍、

解説

次のスッタに続きます。

SN-2-7-307

‘‘Nivesanāni rammāni, 
住居 美しい
suvibhattāni bhāgaso;
よく区分整理された 部分的に
Nānādhaññassa pūretvā, 
種々の・穀物によって 満たされた
brāhmaṇānamadā dhanaṃ.
バラモンたちに・与えた 財産を

よく整備された美しい家は
さまざまな穀物で満たされて
バラモンに財産として与えられた。

解説

バラモンたちは長い間、牛を連れることもなく、寝具は用いずに、森の地面や床に敷物を敷いて寝ていました。所有物は、3枚の衣と食器である1つの鉢だけです。出家したのですから家はもちろんなく、毎日の食事は托鉢で得た食べ物で、穀物を蓄えることはありませんでした。そんなことをしなくても、彼らは人々から生きるために十分以上のお布施を得ていたのです。

禁欲生活に着飾った婦人は目の毒であり、馬車も刺繍も無用の長物のはずです。

SN-2-7-308

‘‘Te ca tattha dhanaṃ laddhā, 
彼らは そして そこで 財産 得た
sannidhiṃ samarocayuṃ;
蓄積に 喜びを・見出した
Tesaṃ icchāvatiṇṇānaṃ, 
彼らの 欲に・陥る
bhiyyo taṇhā pavaḍḍhatha;
より多い 渇望が 増大する
Te tattha mante ganthetvā, 
彼らは そこで 真言を 編んで
okkākaṃ punamupāgamuṃ.
オッカーカ王に 再び・近づいた

こうして財産を得た彼らは
それを蓄めることに喜びを見出した。
欲に溺れ、ますます渇望が増えた。
彼らはマントラを作成して
オッカーカ王に再び近づいた。

解説

完全なる転落です。いったいどんな新マントラが作られたのでしょう?